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  • 執筆者の写真古市伸一郎

このまま新築住宅を建て続けていいのか?

【これからの住宅に対する私の提言】

少子高齢化、人口減少、地球温暖化、資源エネルギーの枯渇、異常気象などなど、2020年になってもこれらの問題は未解決のまま。


私たち今を生きる世代は、今後どのようにそれら問題と向き合っていけばいいのでしょうか。


温暖化や異常気象などの環境問題は、研究者によって違う見解が示され、世界的にもその見方は分かれているようです。


個人的には、「地球温暖化は確実に進んでいる。またその原因には、地球的活動と人為的活動の両方が関係している」と認識しています。


現時点で事実として認識できることだけを中心に置き、CO2の排出は減らした方がいいよね、というざっくりとしたスタンスで、情緒的にならないよう努めています。


環境問題は、今後の研究の進捗をみながら、その時点でちょっと先の最善を選んでいくしかないと考えています。


一方、人口減少や少子高齢化については、客観的データが揃っていて、将来の予測もかなり正確にできるようになっています。


その予測をもとに、今後の活動方針をしっかり考えることができる状態なのです。


ここでは、そのデータをもとに、住宅の今後を考え、「このまま新築住宅を建て続けてもいいのか?」という問題を提議したいと思います。

*採用しているデータは全て国交省及び総務省の公開データをもとに作成しています。


① 2019年の人口

まずは、日本の人口についてです。


総人口は2019年7月1日の確定値で、1億2626万5千人となっています。気になるのは、右側に▲印のついている数字です。


これは、前年2018年7月の数字に対しての増減を表しているものですが・・・


*15歳未満(0歳〜)

・・・・・・20万人減少


*15歳〜64歳(働く世代)

・・・・・・39万3千人減少


*65歳以上(高齢世代)

・・・・・・32万9千人増加


この数字を見るとあらためて、少子高齢化という言葉の意味がわかります。


こんな言葉があるかどうかわかりませんが、少子ではなく少若高齢化といった方がピッタリなのかもしれません。


0歳〜64歳までは減少していて、65歳以上だけが増加しているのです。


② 人口の推移

こちらは鎌倉期以降の人口の推移です。


まず驚いたのは、鎌倉期の人口が757万人で、現在の東京都の人口より少なかったこと。


また増減については、鎌倉期から徐々に増えていくのですが、明治期以降急激に増加しているのも気になります。


これは、明治期までの人口調査自体が曖昧で、正確ではなかったこと。


正確な調査が始まったのは明治期に入ってからというのが原因なのかも知れません(国勢調査は大正9年から開始です)。


よって、データとして信頼できるのは明治期以降からとして考えるのですが、それを見ると、2004年をピークに100年前(1900年)と100年後(2100年)がほぼ同じ数値になっています。


「なんだ、日本の歴史の中で安定していたとされる江戸時代の人口に戻るだけか」と楽観的にみることもできるのですが、問題はその内訳です。


③ 平均寿命の推移

現在の男性の平均寿命は80歳をちょっと上回ったところで、女性については86歳を超えています。


この平均寿命、本来は平均余命というそうで、下の様なグラフが公開されていました。

一般にいわれている平均寿命とは、0歳の時にあと何年生きれるか(つまり余命)という数値だそうです。


これでみると、1947年の平均寿命(0歳の平均余命)は50.06歳になっており、2015年ではそれが80.75歳になっています。


では、明治初期ではどうだったかというと、ほかの資料に42歳程度だったとありました。これは約150年で平均寿命が倍近く伸びたということでしょうか。


どうもそうでなないようです。


当時は幼年期死亡率が現代よりはるかに高かった。寿命が伸びたのではなく、幼年期の死亡率が下がることで、結果的に幼年期の余命が伸びたものと思われます。


例えば、1947年時点で40歳男性の余命は26.88歳となっており、結果的には66.88歳まで生きることになり、2015年時点で40歳男性の余命は41.77歳で81.77歳になります。


確かに物理的な寿命は伸びていますが、倍にはなっていないのです。


この割合で、2050年時点で40歳男性をシミュレーションすると、余命が47.37歳となり87.37歳まで生きることになります。


おそらくこのくらいの数字が、現代の医学ベースでの現実的な寿命かなと思います。


ただ、あと35年ありますから画期的な医療イノベーションが起これば、まだまだ伸びるかも知れませんね。


④人口の年齢別内訳

この表では、各世代の人口構成をみてみます。明治期である1868年です。


*人口総数 3467万人


*15歳未満(0歳〜)

・・・・・・1085万人


*15歳〜64歳(働く世代)

・・・・・・2178万人


*65歳以上(高齢世代)

・・・・・・204万人


この時代はまだまだ、高齢世代が少ないですね。働く世代が多いので国としての成長も期待できました。では、現代から将来の構成はどうなっているでしょう。

2005年の構成

*人口総数 12777万人


*15歳未満(0歳〜)

・・・・・・1759万人


*15歳〜64歳(働く世代)

・・・・・・8442万人


*65歳以上(高齢世代)

・・・・・・2576万人


2050年の構成

*人口総数 9515万人


*15歳未満(0歳〜)

・・・・・・821万人


*15歳〜64歳(働く世代)

・・・・・・4930万人


*65歳以上(高齢世代)

・・・・・・3764万人


となり、上記グラフの通り高齢化を伴いながら、人口減少が加速していきます。働く世代が減少するので経済成長も縮小していくでしょう。


さらに、この現象が続くと、暮らし方にも変化が出てきます。それが次の項の内容です。


⑤人口減少と高齢化に伴う世帯数の変化

このグラフから分かるのは、まずは世帯数の減少です。2015年をピークに(5060万世帯)これ以降ずっと減り続けています。


さらに、その世帯種の内訳を見てみると、単独世帯の変化が興味深く2035年まで増え続け(1833万世帯)、それ以降は、ほぼ横ばいのまま徐々に減少しています。


右のグラフでは、その単独世帯の半数以上が高齢者の単独世帯だという予測になっています。


この状況からいくと、高齢者が暮らす住まいの広さについても、これまで通りとは違った変化が必要になってくるということが分かります。


高齢者の単世帯では、広くても14坪あれば十分なはずで、お風呂や食事など手間がかかる部分が福祉サービスで賄われるとしたら、10坪もあれば事足ります。


広ければそれだけエネルギーを使いますし、普段の掃除も大変です。使いもしない部屋の掃除に、ヘルパーさんを利用するのは税金の無駄遣いだし、その分別の社会保障へ税金を回した方がよっぽどいいはずです。


また、そもそも世帯数自体が減少するのは間違いないのだから、住まいの数自体も減少していいはずです。しかし、未だに住宅は建ち続けています。

近年は2016年(平成28年)をピークに減少を続けていますが、10年後の2030年でも住宅着工件数はまだ63万戸と予想されています。


これは、このグラフにある青い矢印からも想像できるように、着工件数が少なくなるような要因があれば、国がいろいろな施策を行い、その都度その減少要因を補い業界の経済活動を助けてきたためだと思われます。


先の世帯数の変化からも分かるように、2015年をピークに世帯数は減り続けているにも関わらず、新築住宅の着工件数は減っているとはいえ、まだまだ残っているのです。


ここに、何か違和感を覚えるのは私だけでしょうか。


⑥新築住宅は減らすべき!なのに・・・

ここまで書いた通り、人口の推移とそれに伴う住まいの関係から、必然的に導き出されること、それは新築住宅の着工件数を減らすことです。


この内容を良識ある人が見れば、今建てている新築住宅は、将来空き家になる確立がかなり高いことが分かるはずです。


子供たちが将来住むからとか、孫たちが遊びに来た時のためにと、いろいろ理由はあると思いますが、その将来の子供たちに負担を残すことになってしまうのです。


この負担の部分が見えにくいこともあるし、住宅を売る側もわかっているのに新築を勧めてくるのが現状なのです。


現在の住宅業界では、「着工件数が減り続けて10年後には60万戸になります。需要が減る中で生き残るためには、省エネのことや耐震のことをもっと勉強しましょう。」といって、一軒でも多く受注できるようにたくさんの勉強会が開かれています。


その勉強会を国が支援している場合も多いのです。


とはいうものの、国としてもこのままではいけないと分かっているので、既存住宅(空き家など)の流通促進に力を入れています。


税制優遇や補助金などの施策をもって、空き家の活用を促しています。それでもやはり新築が優勢で、空き家の流通量はそれほど増えていないのが実情です。


⑦新築住宅の優位性ってなんだろう?

では、どうすれば消費者が自ら、新築ではなく既存住宅(空き家など)を選ぶことができるのでしょうか?。まず、新築住宅の方が魅力的と感じる要因を整理してみます。


・綺麗である。


・性能や構造がしっかりしている、分かりやすい。


大きくこの二つが、既存住宅よりも新築住宅を選ぶ大きな要因ではないでしょうか。また、国の施策としても、新築住宅の方が分かりやすく利用しやすいものになっています。


例えば、新築住宅向けの施策として、地域型住宅グリーン化事業という補助事業があり、最大で補助金が150万円準備されています。


一方、同じような補助金として中古住宅の場合、認定長期優良住宅型のリフォームで最大250万円というものがあります。


一見、金額も大きく良さそうにみえます。


しかし、現在日本で流通している多くの中古住宅で、この認定長期優良住宅型を取得するのは難易度が高いため、一般的には評価基準型が選ばれ、その補助額は最大150万円になっています。


新築でもリフォームでも補助額が一緒で、特別な理由がないのであれば、消費者が新築住宅を選ぶのは当然ですね。


新築住宅の優位性はこんな感じなのですが、この優位性を既存住宅にも適応できれば、流れが変わるのではないでしょうか。


ここが重要だと考えているのですが、消費者の意識改革(住宅は新築ではなく中古を活用すべきと)を強要するのではなく、国や業界が新築と既存との魅力を近づけていく努力をしなければいけないということです。


新築住宅がいまだに優位性を持っているのは、消費者の選択がそうさせているのでないでと私は思っています。


ときの政府は経済成長や景気対策を成功させたい、住宅業界は売り上げを伸ばしたい。


そういったお互いの利が、既存住宅の活用より、手っ取り早く実現しやすい、新築を推し進めてきた要因だと思います。


⑧新築優遇からリノベーション優遇へシフトすべき

前項でも書いたように、既存住宅活用の優位性が表現できれば、今のような新築主義は変わっていくと思います。


「綺麗であること、性能や構造がしっかりしていて、分かりやすいこと」これらのことは、既存住宅+リノベーションでも解決できます。これは業界の技術革新で実現できます。


あとは国の施策が変われるか、ということになってきますが、そこの部分をちょっと考えてみました。


現在、国もリフォームに対して幾つかの優遇措置を準備しています。


しかし、どれも消費者の購買意欲を刺激するものではなく、その上ものすごく分かりにくいものになっているのです。


仮にここが問題であるのなら、「購買意欲を刺激できて、分かりやすくする」ことができれば、既存住宅活用の促進に繋がるのではないでしょうか。


その解決策となるのが「リノベーション優遇特別措置法」です。勝手に私が考えた法案ですが、この法案こそ既存住宅の流通促進に必ず繋がるものだと思います。


内容はこんな感じです。


*新築への補助事業予算を現在の25%まで圧縮しする。


*そこで余裕のでた予算を既存住宅+リフォームに対する補助事業へまわす。


具体的には、新築へ対する補助額を30万円程度にして、既存住宅+リフォーム(評価基準型)であれば250万円、さらに認定長期優良住宅型であれば500万円の補助金を付ける。


ここまでできれば、新築しか選択肢を持つことができなかった消費者の心にも刺さるのでないでしょうか。


また、消費者だけでなく売る側にも、新築と同等のメリットが生まれるはずなので、既存住宅の流通促進に貢献できると思います。


⑨高性能なリフォームをすすめます。

これくらいのことやらないと、近い将来、空き家の存在に多額の税金が必要になるはずです。


その時、人口減少や高齢化で税収が減り、必ず必要な社会保障や公共サービス維持のために、更なる増税も必要になると思います。


未来の子供たちにその負担を残すことになってしまうのです。


今ならまだ間に合うはずです。2050年ってまだ先のようですがあと30年、現在50歳の私が80歳の時で、今20歳の人が50歳の時です。


このまま新築優位状態があと10年続いたら、63万戸の空き家予備軍が増えることになります。


まだまだ条件が整わず、すぐに既存住宅の活用を一般的にすることは難しいと思います。


新築ゼロにすることは現実的ではないと思いますが、少しでも減らせるよう既存住宅の活用を進めていければと考えています。


私が、新築案件を減らしつつ、既存建物の活用に力を入れるのはこういった考えからです。


既存住宅を美しく、高性能にリフォームし、新たな価値を見出していくこと。それが、日本Rebornプロジェクトの使命だと考えています。

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